2012年7月13日金曜日

パリのカフェ物語6 by Miruba


Chapitre Ⅵ 「オーヴェルニュ人の君の歌」

アールヌーヴォーの建築の写真を撮り、小論文にまとめる宿題があるというので、娘と一緒に出かけました。

論文のテーマは、その昔「低所得者」が入り込めない「ブルジョワ」の壁のようなもの、相互理解できない部分を、一枚の画像でも表現するよう先生に言われたらしいのです。難解です。

ま、彼女の宿題の話をすると、数時間かかるので割愛することにして^^
16区(高級住宅街)にあるアールヌーボー建築をいくつか見て周ったあと、学生街のあるサンジェルマンまでメトロで移動し、パリで一番最初にできたカフェ・プロコープの店先まで行きました。


なぜフランス最古のカフェかというと、当時は貴族や文化人といわれる人たちが政治討議や、文化について語り合うところであり、庶民が入れるカフェではなかった時代だからです。
当時ブルジョワの集まっただろうカフェの前に、庶民の絵を書いた紙を道路に貼り付けて、写真を撮りました。
カフェと歩道に張った絵の間に車がとおり、それが両者を隔てる「壁」のイメージにした、というわけです。


フランスの歴史的には、カフェより、お酒を出すキャバレーが先にできたそうです。
階下はお酒をだし娼婦もいるバーであり二階はホテルになっていて文化人や兵士や貴族が利用したいわゆるお茶屋のようなところで、あまり環境は良くなかったようです。
17世紀後半、そのキャバレーでコーヒーを出すようになるのですが、それまでの薄暗い店内を鏡張りにし明るくして、政治論を戦わせたりするのに集まれるような形にしたのがカフェプロコープでした。

カフェの前身がキャバレーから発したものが多かったので、フランスのカフェは、カクテルも出すカウンターバーの様子をしているのですね。

カフェプロコープは今はレストランです。
中には入らず、宿題用の写真だけ撮り、店内より歩道に広げたテラスのほうが広い、近くの小さなカフェにはいりました。

娘はアイスコーヒー、私は生ビールにしました。

ギャルソンに「ね、ピーナッツとかないの?」ときくと「 Ca depend サ・デパン=場合による」というのです。
つまり、お客さんによってピーナッツがサービスになったりならなかったりするのです^^

最近あまり見かけませんが、一時はガチャポンみたいに、一回分のピーナッツが出てくる機械を置いてあるカフェもあったのですが、
やはり、顧客との会話を大切にするカフェでは、話し合いで?サービスしたりしなかったりする駆け引きを楽しむのがいいのでしょうか?
行きつけのカフェを持たないと面倒くさいですが、それもまた、パリのカフェらしいといえるのでしょうか。

「じゃ、娘にポテトフライを一皿お願い」とたのむと、私にはピーナッツとオリーブのおつまみがついてきました。

おつまみをサービスされたら一杯というわけにはゆかず2杯3杯と飲むでしょうから、そのほうが店としては得だと思うのですけれどね。

オリーブがビールにぴったり。ついつい飲んでしまいます。
娘も私も本を持っていたので、二人それぞれに読んでいました。

道路を行き交う人を眺めながら、春風の中ビールを飲む贅沢。
散々歩いた後なので、更に美味しいのですね。



隣で、オーナーらしき老人が立っていて、常連らしいお客さんと話しをしていました。
お客さんもご年配の、でも洒落たジャケットを着た紳士です。

「Ah bon。そう、じゃあこの店どうするの?」
「跡を継いでくれる子供もいないし、身内もいなくてね。親代々の店なのに、手放していきます」
「オーベルニュに行くのか。昔はカフェのオーナーといえば、オーベルニュの人間だったな」
「そうですね、一時は80%がオーベルニュから来た仲間だったんですよ。いまじゃどこもシノア(中国)・・」

ここまで来て、私たちのほうをちらりと見ました。

「失礼、聴いたわけじゃなくて、耳に入ったの。私、日本人です」というと、オーナーさんは、にやりとしました。

現在カフェの多くは、債権をアジアの優秀な国の人たちに譲り、跡取りの無い退職者が、南仏へ流れているといいます。
終の棲家を考えたとき、パリの人も田舎を求めるのでしょうか。

カフェのオーナーは、お客さんと話を続けました。
娘は、論文の下書きに夢中ですし、私という観客がいるので、オーナーの声は滑らかになり、昔話が始まったのです。



続きは、次回に。A suivre



歌 Chanson pour l'auvergnat   オーヴェルニュ人に捧げる歌



5 件のコメント:

  1. 御美子7/19/2012

    Mirubaさんの「カフェ物語」を読んで、何故かオーベルニュ地方のことが知りたくなり、ウィキで調べてみました。
    水が美しい地方と言う以外、特別なことは分かりませんでしたが、続く物語がとても楽しみになりました。^^

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    1. miruba7/20/2012

      御美子さん^^コメントをありがとうございました。

      カフェのオーナーの話はわかっているのですが、その周りの歴史的事実を確認中です^^
      調べると面白いですね。

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    2. miruba7/28/2012

      日本語で味わってみませんか?
      またフランス語で歌って見てください^^
      ☆シャンソンとフレンチポップスとフランス語の日々http://chansonzanmai.blog27.fc2.com/?no=441

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  2. 私もここ行ったことがあります。
    ビールにオリーブいいですね♪
    調子に乗って飲み過ぎてしまいそう(^▽^;)

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    1. こんにちは

      コメントをありがとうございます。
      そうですか、なんだかうれしいです。
      同じ時間を共有している気がします。
      いつか本当にご一緒しませんか?
      のみましょう^^

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